たもつ


針金を折りたたんでいく、と
先には僕らが息をしている家が見える
目を細めれば海のようなものがあって
僕らはそれを海と呼んだ
その前で君はセーターを編み続け
僕は隣でセーターを食べ続けている
上手くは食べられないけれど
ほめてくれるので少し嬉しい
この子が産まれたら皆でおそろいね
手を休めて幸せの輪郭を撫でる君には
夢を語るべき言葉があり
僕には夢を語らない言葉がない
それよりうまくセーターを食べたいので
針金をさらに折りたたんでいく
やがてそれは点となって
ちゃぶ台を丁寧に拭く
君の後姿が波の向こうに見える



自由詩Copyright たもつ 2007-03-05 20:07:45
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