かすり傷
黒い鴉

命知らずな黒猫
いつもなにかとぶつかって
近づくものに牙を見せ
触れるものに爪をたてた

残した爪あとは
彼の生きた証
孤独すら恐れないことが
彼の勇気

恩知らずな黒猫
傷をなめてくれた白い猫
こんな傷
たいしたことないんだって
強がって でも笑った

なめてくれた傷跡は
彼女の生きた証
傷つける事をなにより恐れる
彼女の優しさ

世間知らずな黒猫
死んでいくのは首輪のない猫
追いかけられた二匹
残されたのは一匹

知ってしまった現実を
生き延びても 心と体に
傷が増えていくだけってこと
こんな傷
たいしたことないんだって
強がって でも泣いた

それを
世間がかすり傷だと思っても
彼にとっては
決して消えない致命傷
でもそれが彼女の生きた証
彼の生きる証


自由詩 かすり傷 Copyright 黒い鴉 2007-03-04 22:31:48
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