夜風<18のprose-9->
ウデラコウ

久しぶりのその声は やはり心なしか疲れていて
ごめんね と 零れ落ちた言葉に
君は苦笑する

久しぶりのその声は 相変わらず可笑しなコトしか口にしなくて
その優しさに思わず 言葉をなくして
俯いてしまう

その間も君は 素直なコトバを並べては
僕の心臓を奪っていく

何も喋らない僕を 不審がって君は
そっと僕の名を呼ぶ

そのとうめいな声に たまらず口に出した

あいたいよ


君は暫く黙った後
何よりも 何よりも 弱い声で

あいたいよ

と呟くから

僕は 同じだと 心の中で叫んでは
そっと涙を零すのだ

そして

すぐに 会えるよ もうすぐに

と明るく言ってきかせ
嬉しそうに頷く君に
悟られないように 涙を拭いて

傾きかけた月に向かって
君が愛し 誓いをくれた左手を 大きく広げて
小さく大きな 約束を 夜空に翳した

春を覚えた夜風は きっとすぐに
君を運んできてくれる





自由詩 夜風<18のprose-9-> Copyright ウデラコウ 2007-03-04 16:38:28
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