雫
松本 卓也
言葉の全てが通り過ぎていく
幾百の思いを込めてみたとして
その全てが届かないように
分かるかい?
ベランダで見上げた空には
星が一つも見えないんだ
光など降って来やしない
例年より温かいはずの風さえ
胸の空虚を通り過ぎる頃には
温もりを無くしている
ただ分って欲しかったのかもしれない
ただ聞いて欲しかったのかもしれない
無二だからこそぶつけた言葉がある
僕が思うより君は強くはなかったのか
君が思うより僕は優しくなかったのか
傷つけたと言う思いだけが
見上げた電線に引っかかって
寂しそうに鳴くカラス
無機質に通り過ぎる電車
雲の端から月は輝き
雫が頬に零れ落つ