春かげろう
さくらほ

3月のつぼみをほどかぬよう
小さく軽くノックする
唇をつけるほどにのぞきこむ
私のこころ乱すほどその姿美しく
手の平で包んで奪い去ってしまいたいと言ったのなら
快活にあははと笑うだろう
君の世界を変えるものは私じゃないと知っている

傾く心はありふれたチューリップのように
自分の力ではどうにもこうにも真っ直ぐにならぬ
それでも倒れてしまうほど思いきりもなく
時折ゆれて
時折ふるえ
いつか君に手折られるのを待っていると言ったのなら
面白そうにあははと笑うだろう
君が連れ去るのは私じゃないと知っている

それでも静まらぬ動悸は
私を春色に染め
陽炎燃ゆるごとく体は熱を発す
何も悟られぬように
屈託のない笑顔の横で私もあははと笑う
君のその頬のつややかさが憎い

春狂おしく
微熱さめやらぬ夜


自由詩 春かげろう Copyright さくらほ 2007-03-01 21:02:21
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君の歌