素晴らしき鈍感
深月アヤ

    
そこに立っていてはいけない
  だってね
  そこは通路なんだから


満月の夜
ぽっかりあいた空の穴へと
長い階段を登る
有象無象の影

水面に映る月は
堕落した命を吸い込む


ひと

ヒト




どこかの女社長は
ドレスの裾を引きずって
地に着く足など無いご様子


交差点では
実に何本もの足が
歩道の上を通り過ぎる


遠の昔に
そこからはみ出した2本の足は
噴水の前で交互にユラユラ

   
   
そこに立っているとね
  通り抜ける魂どもに
  少しずつ侵されて
  知らず遠くへ流されていく


  
  そう 海岸の砂みたいに


方向を見定めるその前に
アナタは命を踏んづけている

曰く

素晴らしき鈍感



鈍らせた五感が
目の前を見えなくしている


生きている人 いない人
息を潜めるこの世界


自分が生きていると断言できるのは何故



ただ気づかずに闇を彷徨う
自分もまた幽霊かもしれないのに





「テーマ先行型投稿企画 Apoptosiem投稿作品」テーマ『幽霊』





自由詩 素晴らしき鈍感 Copyright 深月アヤ 2007-03-01 20:55:21
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