そこに立っていてはいけない
だってね
そこは通路なんだから
満月の夜
ぽっかりあいた空の穴へと
長い階段を登る
有象無象の影
水面に映る月は
堕落した命を吸い込む
ひと
ヒト
人
どこかの女社長は
ドレスの裾を引きずって
地に着く足など無いご様子
交差点では
実に何本もの足が
歩道の上を通り過ぎる
遠の昔に
そこからはみ出した2本の足は
噴水の前で交互にユラユラ
そこに立っているとね
通り抜ける魂どもに
少しずつ侵されて
知らず遠くへ流されていく
そう 海岸の砂みたいに
方向を見定めるその前に
アナタは命を踏んづけている
曰く
素晴らしき鈍感
鈍らせた五感が
目の前を見えなくしている
生きている人 いない人
息を潜めるこの世界
自分が生きていると断言できるのは何故
ただ気づかずに闇を彷徨う
自分もまた幽霊かもしれないのに
「テーマ先行型投稿企画 Apoptosiem投稿作品」テーマ『幽霊』