ジョニーの理由
しゃしゃり

ジョニーがジョニーになった日は
風の強い日だったという


ジョニー
本名は青木勲
親父さんは右翼でアル中だった
よく夜中に日の丸をふってわめきちらしていたという
お袋さんは幼馴染の女教師だったらしい
人さらい同然で結ばれて
ジョニーは私生児として生まれ
お袋さんはまもなく死んだ

ジョニーは母方の祖父母のところにあずけられたが
親父さんはときどきたずねてきて
一万円札をくれたらしい
最後に見たとき
土足であがりこんできた警察が
とても怖かったという
手錠をかけられそれっきり
会うこともなくなった

ジョニーが大事にしてたお袋さんの写真を
親父さんが持っていってしまった
ジョニーはどうしても
その写真を返してほしかった
小学校五年生のとき
電車をいくつも乗り継いで
親父さんに会いに行った

親父さんはもう
他の女と暮らしていた
駅前の木造アパート
赤ちゃんが泣いていた
マリンてゆうんだぜ
お前のいもうとさ
写真を返して、とジョニーは泣きそうになりながら
つぶやいた
親父さんは一万円くれた
マリンちゃんのお母さんはとてもきれいだった

帰り道
おなかがすいて一万円で鯛焼きを買おうとしたけれど
おつりがないからと売ってもらえなかった
ジョニーは一万円札を破り捨て
遠い道を歩いて帰った
でも帰り着けずに補導された
ジョニーの補導歴のはじまりだった

親父さんはしばらくして
あっけなく踏み切り事故で亡くなった
酔っ払って線路で寝ていたらしい
血ぞめの革ジャンのポッケから
ジョニーのお母さんの写真がでてきたって
マリンちゃんのお母さんが教えてくれた
お葬式で
マリンはずっと泣いていたっけ


ジョニーのジョニーはジョニーのジョニー
ひとりぼっちだとゆうこと
だれにも借りはないとゆうこと
人生はかなしい休暇さ
ジョニーがジョニーになった日は
風の強い日だったという












自由詩 ジョニーの理由 Copyright しゃしゃり 2007-02-28 18:56:27
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