青い香り
杉山 さち
高校の時の現国の教科書に載っていた小説に惹かれて高校
をサボって海を見に行った事がある
普段乗る電車の向かい側の電車に飛び乗って30分ほど揺られた
私は真面目だったし学校をサボるなんて事はした事がなかったので
ドキドキした
小説みたいに一家心中を試みている家族もいなければ
不味いカレーを出す古びた食堂も無かった
その当時、私は自分の小さなキャパを完全に越える出来事を
抱えていてそれに小さな、普段ならば何でもないようなささやかな不幸が
重なって私は逃げた
その時はやる事も無い海に飽きて午後から学校に戻った
そして今、
私は再び自分の小さなキャパを完全に越える出来事に出くわし
ささやかな不幸が重なりバイクを飛ばして高台にある総合公園の一番高い
丘の芝生の上に座り煙草を吹かしている
なんてくだらない出来事
なんてくだらない日常
どれも大した事ではなく一つ一つを取り出し解決すれば
なんてことはない出来事たちだ
けれど私は再びこのように逃げているのだ
何も変わってはいない
何も持っていない
私はあの頃と全く変わっていないのだ
既に子供とは言い難い年齢になり
昔のように青い香りは肌からは感じられぬというのに
私は何も変わっていないだ