有るべき翼にまもられて
千波 一也



翼を有する生きものに
あこがれていた

のぞみの場所までは
もちろんのこと
そこから
遥かな地平のすみまで
こころはきっと
羽ばたける

翼を有する生きかたに
あこがれていた


ひとの背中に
翼は不似合いではなく
むしろ
似合うのではないかと思うのに
いまだ一度も
見ていない

ひとの背中に寄り添う風を
翼はいくつ聴いたのだろうか
語りはじめる時刻は
きょうも訪れずに


あきらめることを
どこまで慣れてしまえたら
傷まずにすむだろう

境界線のための
それらの空は
きのうをなくさず
生まれたままで


過去のものごとへと
すり替わる流れをおそれても
自然に
ごく自然に
そそぎ止まない涙のなかで
きれいなままに眠りを落ちたい
ぼくは


あこがれを捨てないことから
あしたを数えた

たとえ翼をなくしていても
まっすぐに
ただ






自由詩 有るべき翼にまもられて Copyright 千波 一也 2007-02-28 09:27:59
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