かくはん(確犯)
渡 ひろこ

さっきからわけもなく
ティースプーンで
カップの中をかき混ぜてしまう
テーブルをはさんで
向き合うアナタの輪郭がぼやける

沈黙が岩のように押さえつけるから
うつむくしかなくて
あざ笑うかのように
アナタの手の中の影は
小刻みにふるえながら
艶やかに点滅する

真っ暗な海のモールス信号みたいで
暗号が伝わる前に
オブラートに包んで
呑みこんでしまおうとしたけど
やぶれてぶちまけたら恐いから
テーブルにこぼれた時間と一緒に
カップにそそいで

まぜて まぜて まぜて
溶かして 濾過して

(最後に渦をまいて吸いこまれる
 アナタを見とどけてから)

すっかり冷めた琥珀色を
一滴のこらず
飲み干す















自由詩 かくはん(確犯) Copyright 渡 ひろこ 2007-02-26 23:51:00
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