キス
かのこ

また去年と同じ
桜が咲いたらあの公園まで歩こう
伸び過ぎた黒い髪を夜風にさらし
二人どきどきしながら、少しずつ触れ合った
そんなことを思い出しながら
この坂道を踏みしめ歩く、一歩、また一歩

どこにやればいいのかわからず
宙ぶらりんになる手首や腰を
あなたが優しく抑え付けて
そこから先はただ時間に委ねた
春からまた春までのあいだを、キスで埋めていった

痩せた足首を躍らせ、目を閉じ
桜の蜜にくちびるを寄せる
季節が一度に弾け飛ぶとき
妄想の亡の字から、妄想の女の字が
頬と同じ色に染まっていく
そして訪れる春の短夜
紫色のビロードを空にかけて

夜が明けて、目を開ければ
そこにはいない
あなたのキス
目の前の光景か、それとも今見た夢か
果たしてどちらが現実だったのか

春の季節を眩ませる


自由詩 キス Copyright かのこ 2007-02-26 23:40:20
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