松本 卓也

夢が舞う歩道橋の上で
東に浮かんだ夕陽を眺めていた

崩れた表情を整えながら
笑う君の残像に目を奪われて
僕はただあざ笑うばかり

まるで閃光の中に消え去った事実のように
記憶の錆付いた青臭い台詞が口の端から漏れる
其処には何一つ本当の事などないはずなのに
なぜかしら脚をそむける事さえできないで居る

駆け上がれば空に押しつぶされ
跪けば臓器の軋む音色に今日の歌を奏でる
悲劇が喜劇となってリンパ管を駆け巡ると
不自然な哀れみだけが世界を満たす

どうしても真実など知りたくないから
誰しもが虚構の幸福に我が身を捧げるのだ

だのに今日も魂を生贄に仮初の麻薬に酔う
差し伸べた掌の温もりを嘘と断言し
フレームに収まった人工物を愛でるだけ

肥大した自我の向かう先は牢獄でしかない
社会性と言う名の歯車を演じる役割さえ
こなせないような下手糞共が跋扈する
単なる協調と言う名の交歓自慰の世界

立ち止まれば底に魂など無く
ただありふれた孤独だけが路上に寝そべる
光をなくした視線など夜空に溶けてしまえば良い
ただ舐めあうだけでは見えることなどなく

生き様の残骸にしか見えない
美しい腐肉の消え去る先に
訪れる末路の道程に彩りを添える

権威に曇る瞳も
投影する理想に罅割れた瞳にも
見えないものは仕方が無い


自由詩Copyright 松本 卓也 2007-02-26 22:38:14
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