茜色
及川三貴
日差し
西側に深く傾いて
水平線の手前
あの焦燥の中で
握る掌は粘って
開くことを引き止めた
私はその時反対側の手で
スカートの裾
飛沫が掛かるほどに
石を投げ込んで
あかねを表す言葉も知らず
ただ焼けた背中を気にしていた
沈み込む音耳から離れず
訊ねた帰り道を
覚えようともしなかった
音をたてて進む針が
柱に掛かっている
あの家で消えたあなたの手を
今でも繋ぎたい
汗を擦り付けるように
握った石は
こんなにも海へ沈んでゆく
そうして底にも辿り着けず
石の呼吸をずっと想い描いて
塗りつぶして
あなたくらい大きくなって
錆が這い始めた
手を眺める
今は誰もいない水場
管を流れる
唾液の音で
ようやく
石が 石から
産む孤独を
知ったのよ