ぼろぼろのつばさ 2
青色銀河団
[しらない]
かわってゆくやつらは
水の美しさをしらない
[青い影]
ぼくは月よりも
流氷よりも青く澄んで
ただはかない予感ばかりが
つのるのです
[風]
うつくしいもの。
あなたの瞳の奥のほうで
やさしく吹いている
オレンジの風。
[ひとりうた]
ひとりはいつもさびしいぜ
ためいきはほんとせつないぜ
おつきさんだってゆめをみるんだぜ
せかいってほんとはすげえまぶしいんだぜ
[はるのひ]
春の日に
生きるあなたの
うつくしさ
[青の時代]
少年と少女は
青い海にむかって走りました
ポケットに
小さな春を忍ばせて
[海]
海はどこか
かなしみに似ている
[虹をつくる機械]
霧吹きの別名
[春の瓶詰め]
こんな
初恋みたいに
あまずっぱい時間は
ビンにいれて
ずっととっておきたいね
[海]
遥か大昔
僕らは
この大きな
涙のなかから
生まれてきたんだ
[くちづけ]
なんか
せつなくなるから
ね
もういっかい
[ぼくら]
自転車のペダルを踏めば
ぼくらあんな遠くまで
冒険できたじゃないか
たんぽぽの綿毛
息で吹き散らして
空の匂いおもいっきり
嗅いだじゃないか
大丈夫さ
ぼくらの時間は
まだまだ続いている
[少年時代]
銀河学校に
通っていたぼくら
かすかな夏の香りのなかで
うたたねしてた
まだ愛の意味なんて
これっぽっちも
しらないで
[おまえ]
夕暮れの草と、紅い花と、おまえ。
天文台と、青い空と、おまえ。
草の名前と、如雨露と、おまえ。
雨と、ビニール傘と、おまえ。
[さびしさに関する言語学的研究]
水に浮かぶバラの花びら
のように
ぼくらは揺れて
いるのです
[ぼくについて]
花びらの感触
水辺の音
手の匂い
淋しさについて
耳たぶの感触
水面の記号
空気のうすさ
ぼくについて
[きっと]
抱きあい涙ぐみすすり泣くちりちりと舞い上がる冬の水蒸気たがいの顔はこぼれるようにゆがんでは潤みはっきりとみえない曇ったガラスの暖かさ毛糸の手袋に落ちる水晶球一滴一滴に写る逆さの世界その中のくしゃくしゃの顔したあなたのこときっといつまでもいつまでも忘れない