蜻蛉、来たりて
北乃ゆき

一夜限りの戯れでも
君の手がわたくしの乳房に触れた時
蜻蛉、来たりて
今、この恋はわたくしの精神から羽ばたいて
現実のものとなりませう

くれないの紅を塗り終えて
赤く汚れたひとさし指がわたくしに残る
蜻蛉、来たりて
あかく、あかく
汚れたわたくしが横たわる

蜻蛉よ、
おまえの一生を
わたくしは知っておきませう
だからおまえも
わたくしの恋を知ってておくれ

流れる血と
痛む身体は
わたくしのものか
蜻蛉のものか

蝋燭の火にゆらめいて
狂う姿は
わたくしのものか
蜻蛉のものか


蜻蛉、来たりて
明日は塵と知りつつも









自由詩 蜻蛉、来たりて Copyright 北乃ゆき 2007-02-25 06:57:36
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