二月、薄明るい空の向こうに
有邑空玖



二月、
薄明るい空の向こうに
何があるのか、あたしは知らない。


人さし指に触れた白い骨は
堅くてさらさらと乾いていて
同じものがこの体の中に潜んでいるのだ、
と思うと、酷く安心する。
少しずつ短くなっていく夜の端っこに
何処にも行けずに留まっていることは
簡単なようでいて、難しい。


いつか見た映画の俳優のように
凍えそうな両手をこすりあわせて
また、骨のことを考える。


神様の名前を忘れてしまった。
記憶とか、断片とか、欠落
そんな響きだったように思う。


一番欲しいものは此処にはなくて
あたしは君を救えない。
冷たい指先で触れた骨の欠片。
そうすることで満たされている。
永遠に縮まらない距離。
確かなのはそれだけだよ。


二月、
あたしたちは神様から遠く離れて
騒がしいこの世界で寂しさを知った。
そして、守られていたことも。


おはよう
また春が来る。




  
初出:20070210「鳥かご朗読会」にて朗読


自由詩 二月、薄明るい空の向こうに Copyright 有邑空玖 2007-02-25 02:01:34
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