黄色い星
フユキヱリカ

誰が教えたわけでもなく
指で三つ、をつくる
しいちゃんは
たくさんを
それはささやかなたくさんを
欲しがろうとする


絵本読んで、と
わたしの膝上に乗っかって
ほお擦りするように
高い体温を
抱きしめると
揃ったえりあしから
シャンプーと
ほのかに甘いにおいがする

角の公園で
たくさん遊んだ日は
耳のうしろから
おひさまのにおい


せんせ
四つちょうだい
ピン、と高く突き出した
主張する手は大人びて

一つだけよ
と母がなだめ
ちっちゃい紅葉の
てのひらに
こんぺいとうを握らせると
舌足らずに なんで、と
わたしの目をのぞきこむ


四つちょうだい
春に、おねえちゃんになるの
しいちゃん一つね
赤ちゃんにあげるの


良い先生らしからぬ
わたしは
手品師になったかのように
ほらしいちゃん
てのなかをみてごらん
一つ、二つ、
三つ、四つ
四つあるよとひろげる

そして
わたしの手から一つ
上手につまんで
ちいろい、
きいろい星だ

含んで笑うのである


カリ、コリと
しいちゃんの口の中で
見えなくなった星は
真昼の月のように
空へと溶けた

かわいい妹がいいな

願いをのせて

タンポポみたいな
ちいろい、
きいろい星だ


ささやかな
しあわせ
含んで笑う


自由詩 黄色い星 Copyright フユキヱリカ 2007-02-25 00:07:11
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