ふゆのさかな・3
銀猫

その水、に違和感を覚えて
やみくもに辺りを手探りすると
両手(否、ひれだろうか)は
ぬるい水を掻き混ぜながら
うっすらと視界を灰緑色に濁らせた


朝の慣例に従い
唇に色を挿して
黒く固い靴を履いても
まだ水、はよそよそしく
水面近くをうねるひれが
刃のような心地さえしている

きっと今もあのさかな、なの、だ

かなしみの理由も
渇いたこころの内の暗雲さえ謎のまま
ひらひらと泳ぎ
少しずつ鱗が剥がれかけている

かな、し、い、さかな

誰かにそう名付けられるのを
どうやらわたしは
待っている

この水は
ぬるいよ
藻が揺れるよ

この水は
錆の匂いがするよ
なんだか、するよ




自由詩 ふゆのさかな・3 Copyright 銀猫 2007-02-23 16:46:53
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