セツナレンサを聴いて
はじめ

 世界が終わってしまったような気がする

 この曲をずっと聴き続けて夜道を歩いていると

 辺りはしんとしたように静かで物音一つしない

 世界中の風が止んでしまったかのように空気は淀んでいて生温い

 気温が高いせいか地面の雪は溶けて道がぐちゃぐちゃに氷付けされている

 世界が死んでしまった匂いがする

 地上を照らす星達も月も死んで消えてしまった

 世界は冷凍庫のように閉ざされこの曲だけが耳に響いている

 僕は動くことを止めた

 地面の氷を砕く音が辺り一面に広がった

 僕は再び歩き出した

 暑くなったのでジャンパーを脱ぐ

 ジャンパーを腰に結んで

 ワンリピートする曲

 ウォークマンの電池さえ無くなればこの世界は回復するだろう

 それまで僕は歩き続ける

 世界を無くしたのと同時に無くしてしまった君を蘇らせる為に

 僕は自分によって強制的に曲を聴かされている

 てんで減らない電池

 いつになったらこの曲を飽きるのだろう

 全く尽きることのない欲

 曲に集中しているせいで

 五感が正常に機能しない

 全てが飾りだ

 大量の汗を流していることにも気が付かない

 僕は何処まで来たんだろう

 歌詞の地名のところまで来たのだろうか

 海底を歩いて世界を一周したのだろうか

 僕はぐるぐる世界を回る

 視線にあるのは曲の歌詞の風景だけ

 孤独に陥った僕を突き動かす歌

 夜空を回り続ける世界

 僕以外何もいなくなった歌の世界


自由詩 セツナレンサを聴いて Copyright はじめ 2007-02-22 11:41:27
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