月と散歩
ポッケ

遠くの底から照らし出される
細く明るいシアンブルー

明度の落ちた青色に
ぺったり塗られて見えなかった
ほんとはつかめるんだね
見つめるだけじゃ
なかったんだ
あんまり気にしてなくてごめんね

その日はとくべつ気持ちがよくて
色分けされた球体を
ふざけてふぅっと下から吹いてみた
くるくる回っておでこの近くで一時停止
じりじり電子みたいにふるえてる

付いてきたいみたいだから
好きなようにさせてあげる
うちに帰ってみんなに見せよう
「付いてきちゃった」って言っても怒らないでね

時々くびをそらして上方確認
気まぐれだって思ってたけど
案外素直に付いてくる

うちに着いて鍵をさがす 鍵を開ける 扉を開く
そんな僅かの手順のあいだ
どこで落としてしまったのか
どこではぐれてしまったのか
下面がうすく光る球体は
下弦の月は
ぐるりまわしたおでこの先には
くっついて来てはいなかった

少しがっかりはしたけれど
だいじょうぶ
気まぐれだけど素直な月は
きっと明日も
遠くの底から照らし出されて
僕と散歩をしてくれる





自由詩 月と散歩 Copyright ポッケ 2007-02-22 00:26:45
notebook Home