それとも指輪の刻印で
たりぽん(大理 奔)

走ることは
ほんのすこし
歩くより早いだけで
大地に触れる回数は
結局少なくなってしまう
走るということは
触れないということか

月はやっぱり見えなくなる

世界から消えようとすると
自分が消えてしまうから
ゆっくりとまぶたを閉じて
世界を消してしまうと
僕は見えなくなる

封印はやさしかった
約束だけが書かれた薄紙が
通り道をふさいで
向こう側を消してしまうと
僕はやっぱり

   道端で封印している
   小さな四つ足の死骸は
   世界から消えようとはしない
   消えないことで
   きっと世界に関わって

誰かをみていたいけど
誰にも見つけられたくない
世界は欲しいけど
世界には関わりたくない
けれどそんな薄紙の約束は
引き裂かれてしまったよ

やさしく笑った
そうやさしいだけのあの白い手が
肩越しに鍵を深く投げ捨て
僕には見えなくなってしまう

輪を結ぶ、親指と薬指
月がその大きさになる黒い夜まで
僕は消えることはない
世界も消えることはない
関係のない世界もなく
封印のかわりに
鍵を掛けて

結界 、
そう小さく刻んで




自由詩 それとも指輪の刻印で Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-02-21 00:23:36
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