完璧な一つの吐息
カンチェルスキス
ノートに絵を描くと
いつも人の顔に見えます
どんなに線を崩しても
唇や瞳のある
表情を持った人の顔に見えます
その理由がわかったのは
ずいぶん後のことでした
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時間は流れています
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今はノートに絵を描くと
いつも同じ人の顔に見えます
どんなに線を重ねても
心臓を描き忘れても
浮かんでくる顔があります
ノートを開く前からそうなのでした
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ひとつの顔だけが
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どこから浮かんでくるのでしょう
その顔は
あらゆる感情と精神が読み取れる顔
わたしの心臓のこのあたり
生きるために必要なこの脳の内部から
わたしは問うことだけしかできず
もうノートを開かなくなりました
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時間というものがありました
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わたしのそばにいたあなたが
もういない
わたしたちは身体を溶け合わせ
繰り返し
完璧な一つの吐息を完成させることに熱心でした
すぐ消えて
でもずっとそこにあるような
わたしたち自身の形でした
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そばにいなくても
どこかにいるわけでもない
閉じたノートを見つめる
わたしの中にあなたがいるのだとしたら
何度でも返事をしてください
わたしはまた自分の身体を連れ出して
あのときの完璧な一つの吐息を
あなたと完成させるでしょう
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ノート以外のものすべてを黒く塗りつぶしても
ひとつの顔だけが浮かんできます
こころが身体を置き去りにしていきます
自分が身体とともにある人間であることに
わたしは激しい憎しみを感じるのです