あめやどる
夕凪ここあ

雨の夜に雨宿り

海の底にいた頃を思い出すと
今でも胸がぎゅっとする

引き潮の晩
こっそりと寝床を抜け出して
海岸線で眺める淡い月

明くる晩も明くる晩も
私段々と海から遠ざかって、く

海の底から水面を見上げると瞼を閉じても眩しい光

珊瑚よりも 珊瑚よりも ずっと

海岸線 丘 から街へ出る

明くる晩も明くる晩も
海へ戻ろうにも日焼けし始めた髪の毛
砂に足をとらわれて、満ち潮、息が次々に泡めいていく

どこかで貝殻の髪飾りを落としてしまった日から

砂浜を歩いて
貝殻を拾い集めても
どれも私のものではなかったし
どれも海の音を忘れてしまっていた

雨の晩に海の近くで雨宿り
溺れそうになっていると
ざわつく暗い海の方からかすかに

珊瑚の、さよなら、


自由詩 あめやどる Copyright 夕凪ここあ 2007-02-20 15:48:17
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