ブラジャー(軍団)
水在らあらあ
ムンムンだ もう
狭い山道に俺はいま 立っている
工房からの帰り
ひとりひとり
ぶつかりそうに
すれ違いながら
笑って
ほほえんで
あいさつする
俺も同じように
挨拶する
ボンジュール
ボンジュール
チャオ
チャオ
チャオチャオ
チャオ…
(クスクス…ウフフ)
カイショ!
カイショー
オラー
オラ
ボンジュール
ボンジュール
チャーオ
チャオ
サリュ
サリュ
ボンジュール…
(キシシシ…ヒヒ…)
しかしみんなそんなに笑顔で
そばかすで 挨拶して
行儀よくて
何で、
いや、
いいぜ、
いいよ、だって
暑いし ね
もうみんな
きらきらしてるし
かがやいているし
でも、
やっぱり さあ
上半身
だけだって
いいのか
いいか
いいよ
いい
すごく
いいです
先生
あれ?
いや
先生
先生は
脱がないんですか
ちぇっ
いやまだ来る
ずっと来る
ずっと 来てくれもう
終わらないでくれ
ああ 今日仕事
はやく ひけてよかった
ああ お天気でよかった
そして
おまえに 感謝だ
おまえに ローレルきれてるから
摘んで帰って来いって言われたから
俺はここにいるんだ
ああ、青空よ
おお、海よ
おお、人間
ああ、肉体
生きている みんな
生きている おれも
君たちも
生きてるんだ
みんな
生きてる
ボンジュール
ボンジュール
チャーオ
チャオ
サリュ
サリュー
(イヒヒ…)
コンニ、チワ
こんにちは、
(クスクス…イヒヒ…)
コニチワ
こんにちは
チャオ
ちゃおー
チャオ…
ああ
この冬晴れ
いや
冬なんかじゃない
今日は
春だ
いや、夏だ
去年の夏を愛した俺に
お礼に くれたんだ
この暑さを
今日この日のこの時に
この暑さを
そして
この
色とりどりの
ぶ、
ブ、
ブラ、
ブラジャー、
ブラジャーを!
ブラジャーを!
そしてその、
その、
動き、
その、
その、
ニュートン!
その、
りんご!
その物理!
物理!
俺はもう、
ニュートンじゃなくて、
ディズニーの、物理だ、
まあ言ったら、
あの
おっきな 西洋な
フライパンにたたかれて、
ビヨンビヨン、
ビヨーン、
そう、
そして
舌は伸びて、
目は、
ハートだ!
ありがとう夏!
ちくしょう大好きだ!
ブラジャー!
その中身は
もっとちゃんと見えれば
きっと
もっと好きだ!
ぜんぶ好きだ!
どうあっても好きだ!
何だって好きだ!
みんな好きだ!
大好きだ!
アゴール!
アゴール!
アデョー
アデョー
チャオ
チャオー
サリュー
サリュー
カイショー…
…でも一体何人いるんだ
何人いるんですか先生
学年
混ざってるんでしょう
だってどう考えても
どうみても
背丈も
その
その
あの
サイズも
違うじゃないですか
だんだん
大きくなってゆく
じゃないですか
ブラジャー、スペイン語で、スヘタドール、
支えるものっていう、
意味がよくわかるじゃないですか
ああ
もう
俺は
君たちが今いっせいにそれを剥ぎ取ってくれたら
もうそれでいい
そしてそのあたたかい
ぬので
その
ぬのきれ で
ぐるぐるに縛られてもいい
そうして
そのまま海に投げてくれたっていい
そんなふうに
いたずらに
笑いながら
(クスクス…)
ボンジュール
ボンジュール
(クスクス…ヒヒヒ…)
サ、ヨ、ナラ
…さようなら
(ヒヒヒ… クスクス…)
ベイビー
…
…
サヨナラベイビーって言った
ブラジャー軍団の一晩最後の
海賊のバンダナした女の子が俺の目を見据えて
髪の毛を
俺の髪を
撫でやがった
それで太陽は立ち止まって
空はちょっとびびって
俺とそのこは
一瞬
本気になって
見つめあって
そこに
風が
吹いて
チャオ
チャオ
振り返って
チャオ
チャオ
あ、そう。
良かったわね。
それで
ローレルは?
いや、
わすれた。
ほぼその場で即興です。すみません。