野をゆく日
木立 悟




何も見ない目で笑うたび
雨から低い視界をもらう
ゆるく傾いだむらさきの道
静かに水に追われている道


緑の借りものの背と指が
午後の風を結んでゆく
金と灰と空と火が
離れることのないように


しずくの去った道の跡
呼ぶもののない呼び声の
ひとつの行方と重なるなかに
生きもののかすかな息つぎがある


離れて熱く
触れて冷える陽のなごりのうたに
緑はひとり根づいては
境をまるく抱いてゆく


川がゆうるりと曲がるちからを
見つめつづける永い血があり
すべての色に染まるしるし
定まりのない水辺に置かれる


晴れた午後をわたる羽音
枝からの雨は降りやまず
もどることのないかたちと色に
うすくひらいたまぶたを濡らす

















自由詩 野をゆく日 Copyright 木立 悟 2007-02-19 21:30:39
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