山田くんと猫と私(僕)
仲本いすら

山田くん家の猫が 一度だけ
家出をしたことがあるという

「うちのみーちゃんは、とってもいいこなんだ!」
と笑っていた山田くんの顔は すごくひきつっていて

大丈夫、大丈夫と なだめる
あの子の声は 耳に入っていないみたいで

「うん、うん。」と
続けるばかり


ああ、もう、ほら
泣きそうになってるじゃないか


ねえ、山田くん
あの子おだいどころまで かけてっちゃったけど
大丈夫なの?

「うん、うん。」
ああもう!こら、山田!

そして僕は山田くんの手を引っ張って
りりり、と鳴る夜へ 駆け出していって



山田くんが、靴を履いていないのに
気づいたのは


その後、みーちゃんが
見つかったあとだった


よかったね、山田君


「みゃあ。」



自由詩 山田くんと猫と私(僕) Copyright 仲本いすら 2007-02-19 19:57:43
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【やまだくん】