チューリップ
水在らあらあ




いつか君の病気が治ったら
どこにでも行こう
そのときまでに俺は
いろんなところを見ておくから

いつか君の病気が治ったら
カンパイしよう
缶ビールでいいよ
もう薬はいらないんだ

いつか君の病気が治ったら
にらめっこしようぜ
人の目を
じっと見ていられなかった君


ああ 見なよ 人々が あんなに お互いを 遠ざけて


いつか君の病気が
治んなくたって
俺は同じようにするし
君といつもいっしょにいるし

だから
いつか君の病気がなおったら
やさしく 世界を見よう
そのときまでに俺は船を一艘作っておくから
世界中を やさしさを持って見てまわろうぜ

そう、今行こうぜ、君は病気なんかじゃないんだから
なあ世界は広くて 人々はどこでも虐げられて
人の手が届かない動物たちだけが
鳥たちが
自由な海の魚や人魚たちだけが
奔放に、生に忠実に生きている
それは、遊びだ
遊んでるんだ
俺達は遊ぶために生まれてきたんだ
こんなふうに
ほら、こんなふうに
踊るんだよ
踊ろう

俺達は公園にいる
君は苦笑いしながら
俺が中国屋さんで買った
あんまりおいしくない烏賊の燻製を食べている
君の目は青い
俺たちの心も同じように青い

風が吹いて
木々が俺たちを
俺たちの青い心を脅かすように鳴いて
そこでチューリップが
悲しみを左右に振り分けている

君はそのチューリップを一つ引っこ抜いて
匂いを嗅ぎながら
俺に手渡す
この匂い
この匂いの中に
俺達はいるんだ
いま俺達はこの匂いの中にいて
その中には白鳥がいて パンを盗むリスがいて 亀がいて 孔雀もいて
白人の俺がいて 東洋人の君がいて


ああ ほら ひとびとが あんなに きれいだ 太陽の中で


靴脱ごうよ
素足で大地に立とう
このまま海に行こうか
そうして俺達は遠い国へ行くんだ
それで君の運命の人を探しにいったらいい

遠い国に来て
君のような
友達ができて嬉しいよ
だから世界は繋がってるんだって思うよ
人々は どこに行ったって
いっしょだ

遊んでいればいい
宇宙と一緒に
一点に向かって
疾走しながら
それが終わりだとしても

同じように笑い
同じように泣くんだ
それでいいんだ
それがほんとうなんだ
それが真っ当なんだ


ああ 今 生きている みんな 生きているね 


日が 暖かいね









自由詩 チューリップ Copyright 水在らあらあ 2007-02-18 12:52:00縦
notebook Home 戻る