冬は、しかし失われ
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冬は、しろく息が砕け
朝を浴びて目の前をただよっている
今どこかで
開かれた窓に
外が流れこみ
人に触れた渦が加速して吸われ
熱をうばい、いのちを呼びさます

冬は、空がひびきあい
轍に沿った霜柱を駆けている
未整地に群れ
歓声をあげる
キャッチボールを
鮮やかな結晶に瞳を張りめぐらせ
音すら、しばらく抱きとめる

冬は、しかし失われ
都会の屋根に蛍光する繁栄の影に
追われたものの常で、北へ
けものの持つ良い
しかし、孤独な骨の
透明のように
果たせない約束となっても
未来に届きたい
それは
黒い枝に留まった鳥が
やがての花を迷わず選ぶことではなく

固い海がざわめきを立てる
遠ざかりながらの
暗い余韻ではなく

偶然、船出に立ち会った少女が
将来を予感して
真新しい籠に
不安ではあるが
確かな幸せの予感を
いっぱいに摘みとることでもない

まして宇宙の神秘が
掌を
陽にかざす度に烙印される
といった
御伽話で、あってはならない

ブラウン管で温められた
冬は無言で
雪だるまも なみだを
溶かして泣いていた





自由詩 冬は、しかし失われ Copyright soft_machine 2007-02-18 00:55:52
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