lost child
三架月 眞名子
ふわり
帰宅ラッシュの駅のホームで
不意に香るあの人の匂い
名前もしらないあの香水
忘れもしない
アタシの精神安定剤
でも
もう手に入れることはかなわない
だって
世界中を探し回ったって
あの人の代わりは見つかりっこないもの
絶対に
あの温かくて大きな手に
慰めてもらう事は叶わない
頭に優しく乗せられた手に
幾度救われただろう?
いや
回数なんかの問題じゃなくて
その仕草の1つ1つに
確かな優しさが込められていた
迷子の子供に道を教えてくれた人
彼はもう側にいない
案内人とはぐれたアタシ
再び迷路を彷徨う運命?
そんなのあの人は望んでいないだろう
だから
これからは自分の力で道を探さなければならない
もし偶然出会えたらなんて甘い考えは処分して
もう大丈夫
アタシは強くなったよ
少しずつ
でも確実に