終着駅
海月

窓ガラスの向こうで夜景が飛んでいく
暗闇の中で街明かりが僕らの後ろに流れていく
鉄と鉄が擦れ合う音が耳の奥底に響く
低音、高音交じりの不快な声が耳元を走り去る
右から左に抜けて、残されたのは実体のない人物の繋がり
想像上の生き物として笑い話の糧にされる
次の人に話す時には本人とは似ても似つかない形になり
人によく似て人じゃないモノになった

向かい窓ガラスには自分の顔が歪んでいて
軽い恐怖心から眠る君の手を強く握り締めた
手と手の温もりが心の奥底に伝わり
人でしか味わえない理屈や理論なしの存在(気持ち)があった
「痛い」と呟く君の声が僕の手に更に力を込めて
「離して」と云われるのを期待している
窓ガラスには君の顔も僕の顔も歪み
人によく似て人じゃない顔になった

電車は暗闇の中を走り目的地に向かう
終着駅は未だ来ない


自由詩 終着駅 Copyright 海月 2007-02-17 14:50:43
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