終着駅
海月
窓ガラスの向こうで夜景が飛んでいく 
暗闇の中で街明かりが僕らの後ろに流れていく 
鉄と鉄が擦れ合う音が耳の奥底に響く 
低音、高音交じりの不快な声が耳元を走り去る 
右から左に抜けて、残されたのは実体のない人物の繋がり 
想像上の生き物として笑い話の糧にされる 
次の人に話す時には本人とは似ても似つかない形になり 
人によく似て人じゃないモノになった 
向かい窓ガラスには自分の顔が歪んでいて 
軽い恐怖心から眠る君の手を強く握り締めた 
手と手の温もりが心の奥底に伝わり 
人でしか味わえない理屈や理論なしの存在(気持ち)があった 
「痛い」と呟く君の声が僕の手に更に力を込めて 
「離して」と云われるのを期待している 
窓ガラスには君の顔も僕の顔も歪み 
人によく似て人じゃない顔になった 
電車は暗闇の中を走り目的地に向かう 
終着駅は未だ来ない 
 
