ニンジン笛
シリ・カゲル

僕は、毎朝
市民農園で育てた
形の悪いニンジンで笛を作る
ウサギたちが楽しみにしているのだ

僕は、ウサギたちの喜ぶ顔が見たくて
苦心して笛を作る
リードのところなんて、ウサギたちの
デリケートな前歯が
引っかからないように
ずいぶんと工夫もしてあるのだ

それなのに、ウサギたちは
ニンジン笛を気持ち良さそうに
目を細めて演奏しているうちに
よりにもよって、そのニンジン笛を
むしゃむしゃむしゃと
食べつくしてしまうのだ

全部食べ終わると
ウサギたちは決まって悲しそうな顔で
僕を見る
どこかに消えた笛の音だけが
空白を埋める

僕はニンジンを作る
ウサギは笛を食べる。


自由詩 ニンジン笛 Copyright シリ・カゲル 2007-02-17 12:12:13
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