*光がもどってこない*
かおる


陽射しが緩む毎日に
空が
ひとつ
忘れ物をしました

宇宙まで透き通る空は
あおい色を
キラキラ煌めかせて

風に総天然色の花を
ふりまいていても

コートの襟を
かき寄せる手は
まだもどってこない光を
懐かしむ

トンネルを抜けなくちゃ
冬の光そのものに
包まれる事は
もうできないのだろうか

次郎の屋根に降り積り

太郎の屋根に降り積り

大地を浄化するような
冷たい白い光

全ての音を吸収して
静かに降りゆく光

この街に
勘太郎が大手を振って
渡っていった痕跡は
まだない


自由詩 *光がもどってこない* Copyright かおる 2007-02-16 21:41:37
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