汚れた川に
三条麗菜

無残にも
切り離されてしまった私達が
無意識に吐き散らした
ため息の中

そこに燃え残りの灰があり
それは空を覆って
雨となり落ちるのです

だからここに降る雨は
川を汚してしまいます

それでもその
汚れた川に身をゆだねましょう
いつの日か泳ぎ方を
すべて忘れてしまわぬように

 二十四時間
 誰かのために生きよとは
 誰も言わない
 けれども私の内なる声が
 私に指を突きつける

 「お前は今この瞬間
  誰のためにも生きてはいない」

 流されまいと意地をはり
 いつまでそこにとどまるのか?

人々が生み出す濁流は
もはや当然のこととして受け入れられ
澄み渡る川のことなど誰一人
考えることすら
できなくなっているのです

汚れた川を見て呆然と
きっと海まで汚れてしまったと
誰もが感じているばかりです

だから時に
汚れた川に身をゆだねましょう
私達が泳ぎ方を
すべて忘れてしまわぬように

泳ぎ方さえ忘れなければ
たとえどんなに世界が汚れても
水平線の果てまでは
行くことができるのですから


自由詩 汚れた川に Copyright 三条麗菜 2007-02-14 21:54:05
notebook Home