雨雲に覆われた地球
はじめ

 世界中では雨が降っている
 誰も天気予報を必要としない
 毎日人々は傘を持って外出している
 飛行機なんてない世界だから誰も雲の上に出たことがない
 雲の上には神様の国が存在していると信じられている
 神様が地上に雨を降らせていると言われている
 作物は雨だけで育つ
 人々は太陽というものを知らない
 というより太陽はこの世界には存在しない
 僕は干し草の中で眠っている
 干し草は嗅いだことのない太陽の匂いがする
 午前中に外を見 耳を澄ませてみると
 細かく千切れた雨がさぁーーぁと降っている
 僕は女の子を待っている
 あの木の下に現れてくれないかな
 僕と君だけの世界
 車の走らない地域 嫌な音を立てない
 季節は冬に差し掛かろうとしている
 冬になっても雪は降らず毎日雨が降り続くのだ
 僕と君は愛し合う
 巨大な燕に乗って決壊しない雲を突き抜けたい
 地球は雨雲で覆われている
 数百年後
 地球人初の宇宙飛行士は言うだろう
 地球はグレーだったと
 水に困ることはない
 僕は自分の家で女の子を待っている
 夜になると眠りを助長してくれる
 楽しい雨の夜
 朝起きたときは雨だと少し憂鬱だが
 詩を書いて
 午前の雨は家族のいない僕に安らぎを与えてくれる
 女の子が木の下で立っていた
 僕は彼女を迎えに行き 中へ入れてあげた
 僕の愛する彼女
 彼女は髪を拭きながら笑っていた


自由詩 雨雲に覆われた地球 Copyright はじめ 2007-02-14 07:24:51
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