決別
海月

他人の痛みを理解しようとして
無理して心の奥底まで覗き込む
其処には自分の顔が映っていて
今にも泣き出そうな顔だった

春の音が別れの時を読む
残された日々の短さ
二度と会うことない奴もいる
直ぐに会うことになる奴もいる
色んな顔が狭い巣箱中で暴れている
その翼を羽ばたかす時の訪れ

一人前に扱われる
自ら望んでいたのに何処か違う
道具としか見られていない
自分がいなくても明日は来る
今日に置いてきぼりを食らう
だから、全速力で駆け抜ける
孤独になりたくないから
出来るだけ歩幅を合わそうとする
実に無意味な事だった

自分の時を持つ事を許されず
家と会社の繰り返し
日々に変化を持たすために
週刊誌なんかを買ってみたりする

誰にも話す事の出来ない思い
話した所で誰しもが
心の何処かでそんな風に
思ってみたりしている
ただ、口にしないだけ
口にした所で無意味と知っているから

夢は選択出来るものじゃなく
夢は消去法で残ったもの

水溜りに桜の花や梅の花が水面に浮いている
覗き込んだ隙間から自分の顔が映っている
それは澄み切らずに雲が残る晴れ空に似ていて
不安と期待の決別の朝だった



自由詩 決別 Copyright 海月 2007-02-14 01:26:36
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