ミステリアスドレス
むらさき

「安いから買ったんだけどね、あまり袖を通していないのよ。
私の皮膚にはなじまないっていうか、もうすでに誰かの皮膚って感じがして。
・・・いやぁね。どういう人が着ていたのかしら。
きっと洋子とか瑞江とかそういう感じの名前の女だと思うわ。
結構着古されてるし、これ着てルンルン気分で銀座でも歩いたのかも。
あ、でもどこかの田舎町っていう可能性もあるわよね。
でも、いい時ばかりじゃなかったと思うのよ。
もしかしたら、これを着て男と大喧嘩ってこともあったかも。
走って男を追いかけたりしてね。
つらいわよー。
これ着て走るの。
だって機能的に出来た服じゃないから。
あ、でもドレープが綺麗だから走ったら美しく見えるかもしれないわ。
あら?
よく見たらここのボタンが取れかけてる。
これ、自然にこうなったのかしら。
それとも誰かにひっぱられたから?
ああ、もしかしたらその洋子だか瑞江だかが
自分でひっぱったのかもしれないわね。
キーッとかいって。

あはは。」



自由詩 ミステリアスドレス Copyright むらさき 2007-02-13 18:21:18
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