南北西東
あおば

                     2007/02/10
空部屋を求めて
新百合ヶ丘駅前に着いた

仲介手数料0.5ヶ月分
敷金1ヶ月、礼金なし
1ヶ月分の家賃は
任意と書いてある
つまり おまかせというわけで
手付け金は
手持ちの1000円札1枚でも
かまわないというので
1年契約する

恐る恐る
家賃4000円ではどのあたりでしょう

尋ねたら
北越の山奥とは言わないで
昭和32年の杉並区と返事があって
部屋の中には、裸電球に二股ソケット
流しもトイレもない
水道の蛇口もなく、
水は、
モーターポンプ付きの井戸がある
外の共同洗面所に汲みに行く


風呂は近くに公衆浴場があるからと
浮かれて、
手ぬぐい片手にでかけたが
歩き疲れて、汗だらけになっても
それらしきものは見あたらず
目新しい
堂々とした岩盤浴の看板が目に入る
2時間休み放題、4000円

湯上がりに
横町に曲がると
駄菓子屋があり
若い娘がつまらなそうに店番をして
父母は新百合ヶ丘に働きに行っていて
いつもすれ違い
正月には一度出合ったが、それ以来全く音沙汰がないと
寂しそうに笑う
この辺りの子供たちはすれていて
少しでも隙を見せると、店先の林檎をかっぱらい
学習塾の行き帰りに囓るのだという
塾にも行かない幼い子供たちは四六時中彷徨いて
子供のくせに疲れたを連発し昼間から歩道で寝ころんだりして
いる
時代を先取りした、たいした知恵者だと大人達は褒めそやすが
青白い顔した青年が訪れて
店番の娘はいなくなり
駄菓子屋は主を失い
店先はすっかり空になり
餓鬼どもは飢えて
学習塾の往復に腹を突き出しては辺りを睥睨する
朋輩がくたばるのを待っているのだと
大人達はうわさしている

ウトウトしながら記している
風邪薬を飲んだら
眠くなったとプログにも書いた
酒を飲む前には
風邪薬はよくないと思う
北枕で眠ったので
風邪をこじらせたのだ

明日からは南枕にするので
東西南北隠れのない
風邪薬の三四郎と
名乗っている







自由詩 南北西東 Copyright あおば 2007-02-11 03:01:43
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