マリンタワー
銀猫
海は凪いで
時折水面の灯りが膨らむ
こんな場面に身を置くと
ゆめを見たくなる
会いたい、の裏側にある
まだ微熱を残した感情から
目を背けずに
鞄ひとつぶんの希望を詰め込んで
夢のつづきとレイルを辿り
窓を流れる景色を
きみの困った顔を
硝子の向こう側に探すのはどうだろう
荷物棚に載せた鞄は
時折ゴトゴトと音をたて
逃げ出そうと試みたり
すすり泣いたりするかも知れないが
わたしは窓に額を押しつけて
瞬間、のことばを探すだろう
海が凪いでいる
夜と水平線の境目は
更に曖昧になり
黒と濃紺を行き来している
マリンタワーの次の光に
影を暴かれる前に
ゆめ、と列車に乗ろうかと思う
足元で砂が濡れている
抱きしめたい