真実
P.B.

雨の中、電線に止まって動かないカラスを僕は見ている
君はそんな僕を見ている
カラスは無言で、僕も無言、そして君も無言
しばらくしてカラスが飛び立って、その姿が視界から完全に消える
ぼくは、ゆっくりと君のほうに視線を向ける
カラスが遠くのほうでカァーと鳴いたかどうかはしらないが
しばらく僕と君は無言のまま視線を交わしていた

やがて、君が、カラスが去ってしまった電線のほうを向きながら言う
「何か真実っぽいことを言って」

「・・僕はゲイだ」
僕も、再び電線のほうに目を向ける

「うん、真実っぽいね。真実ではないけど」

雨の音がさっきより大きくなった



自由詩 真実 Copyright P.B. 2007-02-10 02:54:32
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