song
三架月 眞名子
親の顔なんか記憶にない
物心ついた時からこの
薄暗い施設で育てられて
周りの子たちとも全く馴染まず
一言も口を開かないまま育った
だから自分の声がどんなものか知らない
泣き方だって知らない
叫びだしたくなることもない
笑うってどんなものなのか興味すら持てない
でも、唯一つ
一つだけ…
古ぼけたラジオから流れてくる
取り留めのない曲を
ただぼーっと聴いているのが大好きで
何を歌っているのかわからないけど
すべてが鮮やかに色づいていて
そこには自由があって
それを聴いていると
自分も歌ってみたいような気がしてくるけど
怖くて最初の一歩が踏み出せない
そんな日々を繰り返し
あっという間に歳月が流れて
僕が産まれてから17年経ったといわれた日
今までと何一つ変化はないはずなのに
その日の空がやけに綺麗に見えて
そしたら前に1度聞いただけの
今まで特に思い出しもしなかった曲が頭に浮かんで
その旋律を頭の中で再生していたら
後ろからパチパチと
手を叩く音がきこえて
びっくりして振り返ると君がいた
「歌、結構上手じゃない」
その言葉でやっと気づく
自分が歌を口ずさんでいる事に
それがなんだか恥ずかしくて
居心地悪いまま佇んでいると
君は隣に寄ってきて
『HAPPY BIRTHDAY』
を歌ってくれた
それが初めて
タイトルと意味を知った歌