早春
はな
さいきん
足先がむずむずする
春は
あと何日でくるのだろう
車座になって
くちぶえの練習をして
それが時折
ふってくるのだ
うらはらに
さむいひが つづいて
ゆうべ
おもいだしたように
兄が来た
ぱりん とわれそうに張り詰めた空に
たばこの煙も
ふうっと吐いた息も
ぜんぶ標本になって
浮かんでいる夜
寒い と
耳に両手を当てると
吸いかけのたばこは
小さく燃えながらべらんだの柵を越え
落ちていった
惜しそうに下ばかり見る兄を見て
笑う
こんな
清冽な、冬の日に
わたしたちはこごえながら
いつもこんな風に
つめたいそらの下にばかり いたような気がする
あなたに会えてよかった
そういう
ことばを
わたしはずっと
とおざけてきた
そんな気が する
きこえない いくつかと
まだきこえつづける いくつかと
ふいにふってくる
春の
足先の冷える日
ときどき
練習がきこえると
わたしも
何かを思い出すので
いつも見ていたように
天辺にうつる
あたたかな海を見上げる