発火する夜
ヨルノテガム

わたしはそれについて語りたいと思うのですが、
外で風がジユウジユウと流れていまして
窓という窓を閉め切って歩む作業に追われています
しばし猶予を。



さて、鉄骨の話でしたかな
いやいや、幽玄のそれでしたかね、

洞窟の、鼻水の、また小さき洞窟の、
錆色の、土壁じみた偶像の、そうそう
不在でしたな、水玉模様にネジボルト。

コンコンと直線的な合理性に怖れを抱きつつ、
矮小な設計図を拡大してゆくと、
あっと女体像がぼんやり現れて
顔を無くして林立す、

どうしようもない薄気味と枯渇した粘土層が
ジワリと表象へ頭をもたげてきて痺れる


花が必要かもしれぬ


花瓶の影の、それ太陽の、火を秘めた陶磁器の、
こねくり回したの、ビルの、ネジの、鉄骨の背骨の、その上の
フワフワの、綿菓子のような
幽霊と、
空を持ち上げる大巨人の悩みと、
森の暗さと、
梅干しのようなヒモ吊りの夕日と、
大地へ張る木々のネジボルトと、
緑から黄へ色づいてゆく葉っぱの黄昏と、
受粉と受精と合致と拡散と、そう、
白い、白いのは、かえるの卵のような

未来の塊である、

それを見るのは心地よい滅びでもあるナ

明日に焦点の定まらない
両乳房の眼力の
運命の遊びが詠われていることよ



花瓶の下に矢印が埋まっている

喉元に突き当てられた、その先への気後れと共に、

わたしはもう眠ろうではないか






























自由詩 発火する夜 Copyright ヨルノテガム 2007-02-08 17:10:58
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