貝あそび
佐野権太

西日のうちよせる窓辺に
幼い貝がひとつ
もぞもぞと動く白い靴下を
つん、とつけば、またうずくま

どうしてこの子は
こんなに静かな遊びを
思いついてしまったのだろう
座り直し
娘と並んで貝になる
明るい陽が満ちてくる

妻が顔を出して
あらっ、と云って蹲る

下の娘が
すりよってきて
僕と妻の間に蹲る

畳の匂いを吸いながら
貝、よっつ
おとなしく、居る





どこからか
人の声がする
人の声がしなくなる










自由詩 貝あそび Copyright 佐野権太 2007-02-07 12:29:23
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家族の肖像