仕様
松本 卓也
仕様が無い
そうやって誤魔化していれば
納得してもらえるなんて
思っているわけじゃない
作り上げた構造に
己の意思が介在する要素が
1パーセントに満たなくったって
目の前にある現実を生み出した
責任の一端に画策したのは事実
繰り返した回答の先に
明確な標など残されていない
されど数万のステップの中で
描きこんだコードが一行でもあれば
逃れられない生み出し手なのだ
このシステムの中からほんの少しだけ
バグを取り除いてやろうと思った
それこそがそもそもの間違い
まるで全ての責を負うかのように
理不尽な説明を求められる
仕様が無い
けれど神の視座からのクレームを
公平中立に裁ききる余裕などあろうか
それが生きるという事ではないか
それが食っていくという事ではないか
愛想笑いが張り付いた仮面と
脱ぎやすい靴とベルトを準備して
矢面を耐え忍び均衡を保つだけの
手順書があったら是非渡して欲しい
今日もまた仕様の無い闇の中で
現実を知らぬ若造のクレームを目にして
世界をデザインする歯車に組み込まれた
数千通りの溜息を聞いている
気楽に愚痴り反発するだけの
嘆き失望するだけの自称患者達と比べて
今の僕はどれほど病んで無いと言うのかい?