雨降りサイクル

ドンヨリした空模様
霧雨
緩やかな坂道をチャリで下る
途中にある、鯉ショップ
の前で立ち止まる
濡れそぼち
エアーポンプ

窮屈な水槽の中を泳ぐ、鯉やフナには
外の天候はあまり関係ないのかもしれない
雨降りの日の
ヒザの痛みくらいはあるのかもしれない
ゆっくりと旋回する

違う水槽に目を移して
水面をプカプカ浮遊する
金魚たちに見とれる

いろあざやかで奇麗なさかな

金魚は野生のさかなではない
という話を聞いたことがあって
そのときには驚いた
川とかでは滅多にお目にかかれない
エキゾチックで
珍しい魚くらいに思ってたもんだから

しかし金魚は
ヒトの好みに合うように
人為的に交配され、改良を重ねて
創られてきたさかなだ

生まれてくる前から
ねじまげられたいのち
ヒトの欲望

それは本来のさかなの姿から遠く
かけ離れたかたちのものほど短命で
おまけに川に戻すと、何代目かで
もとのフナの姿に戻ってしまうのだという
先祖返りして

ヒトの世をプカプカ泳ぐ不思議なさかな
いろあざやかで奇麗なさかな
浮世を泳ぐさかな

急にいま自分が被っている帽子にプリントされている
ミッキー・マウスにすこし似てる気がした
いのちをねじまげられたさかなと
いのちを吹き込まれて
セル画を飛び出したネズミ
いのちあるものと
ないもの

ヒトの手が生み出したもので
世のさまざまなシーンに
息づいているという点で
ヒトの指先が創り出したものだが
どこかヒトの思惑を超えているところが
ちょうど朝のTVニュースで日本列島を覆う
雨の天気図のように


自由詩 雨降りサイクル Copyright  2007-02-06 16:13:52
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