三日月
はじめ

 夜になると
 緑色に輝く布に僕は立ち上がりながら包まれ
 凍った吐息を漏らす
 指の爪が長く伸びて尖って
 僕は白い吐息を何度も吐く
 夜を駈けたいと思う
 地上に落ちた三日月を横目で見て 僕は屋根屋根を越えていく
 部屋の中で見た銀河を思い出す
 胸に白い粒が突き刺さる 僕はパニックになる

 屋根の上に腰を下ろし 
 墜落した巨大な三日月の撤去作業を見ている 
 僕のマフラーは揺れている
 トラックやクレーン車が月の欠片を積みワイヤーで引っ張っていく
 僕は深呼吸をした そして月の破片を吸い込んでしまった
 今は冷たい僕の部屋
 僕が小鳥になった
 胸が開けて温もりが露わになった
 仏壇のように開いて
 月は砂場の砂のような色をして暗闇の大気の流れを地面に擦らせている
 クレーターが光っている
 太陽が出ている 僕はそれを確認して唾を飲んだ
 白い光

 僕はシルクハットを脱ぎ去り
 夢の中で全く予想もつかないことをしている女の子の為に見守り続ける
 僕には予想外だ 僕は風化した三日月を砕く
 夢の支配人さ 人々が見る夢は僕が全て管理している
 三日月が落ちてきたのも誰かの夢さ
 僕はヘンテコなことをしている
 早くベッドに戻って
 夜空が映る天井を見よう
 僕はもう眠らなければいけない
 空に星が瞬いている 順番通りに並んでいる
 僕の溜め息は温かいものに変わった
 悪魔なんかもうどこにもいやしない
 僕は布団を被って未来のことを考える


自由詩 三日月 Copyright はじめ 2007-02-06 00:48:35
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