再起動
狩心

闇が町を包む
一番目の朝だ
どう見ても夜だ
二番目の朝だ
晴れている朝だ
どう見ても星が輝く朝だ
握り締めた拳を開いてしまえば夜になる
だから拳は握り締めたままで
瞬きを拒否する眼球が空を赤く染める
毛細血管が脈打つ充血の夕焼けだ
心臓の鼓動も見える
いつの間にか月は太陽になり
太陽は心臓になっている
町中に張り巡らされた大腸の道を練り歩き
時に消化液の雨を浴びる
どう見ても体の中だ
火山のような海だ
巨大な胎児が高層ビルの代わりに立ち並び
荒波の如くうねっている
無抵抗な者たちを支配する音楽の響きだ
胎教が始まっている
水深が上昇しているのは
温暖化現象が原因ではない
地球が人間を胎児に戻す為に羊水を作り始めただけだ
どう見ても地球の涙だ
どう見ても心の中だ
この夜が三番目の朝だと再起動を繰り返すのも

記憶が過去を問いただす
そして現在は跳躍する
両腕を絡めて空へ伸ばし
体をねじり電信柱となる
世界中へ情報を配信する電子機器だ
赤い糸など何処にも無く
灰色の配線だけが張り巡らされている
答えを掴まない為の色は全てを繋げる為の色でもある
どう見ても愛に飢えている
複雑な事ばかりが得意で
単純な事が出来ない道化師の群れだ


自由詩 再起動 Copyright 狩心 2007-02-06 00:39:28
notebook Home