種子の祈り
A道化
くちびるの
置き場所を間違えた、夜明け
あなたへと無音で震える春が
無音で体温する春が
祈りを湿らせるので
耐え切れずに申し上げた春が
ぬくく、痛く、ここに
滲み始めるのを見ていました
あとは
*
プラットホームの、コンクリート
ではなく
わたしは、わたし
うずくまり
コンクリートに近づきはしても
わたしは
わたしという体温
体温という祈り
わたしは
祈りを湿らせる春に浸り、ぬくく、痛く、冬に溢れ
こんなにもこんなにも、コンクリートに近づいても
コンクリートではなく、ぬくく、痛く、ここに
冬ならではの春が溢れるのを見ていました、あとは
春ならではの冬を、頬の内側で耐えるつくりの
苦い種子のようなこのかたち、それでも生きているかたちから
あなたへ、あなたへ、あなたへと発芽し間違えたくちびるの
無音で震えた春、無音で体温した春のことを、既に申し上げた、
既に申し上げたのだから
あとは
*
あとはもう
申すことはありません
プラットホームの
コンクリートに近づいてわたしは
苦い種子のようなかたちの体温で
わたしは、それだけで祈り
ああ、体温、それだけを用いて
わたしは音も無く、
祈り、
2007.2.5.