種子の祈り
A道化





くちびるの
置き場所を間違えた、夜明け
あなたへと無音で震える春が
無音で体温する春が
祈りを湿らせるので
耐え切れずに申し上げた春が
ぬくく、痛く、ここに
滲み始めるのを見ていました
あとは





プラットホームの、コンクリート
ではなく
わたしは、わたし
うずくまり
コンクリートに近づきはしても
わたしは
わたしという体温
体温という祈り
わたしは
祈りを湿らせる春に浸り、ぬくく、痛く、冬に溢れ
こんなにもこんなにも、コンクリートに近づいても
コンクリートではなく、ぬくく、痛く、ここに
冬ならではの春が溢れるのを見ていました、あとは
春ならではの冬を、頬の内側で耐えるつくりの
苦い種子のようなこのかたち、それでも生きているかたちから
あなたへ、あなたへ、あなたへと発芽し間違えたくちびるの
無音で震えた春、無音で体温した春のことを、既に申し上げた、
既に申し上げたのだから
あとは





あとはもう
申すことはありません
プラットホームの
コンクリートに近づいてわたしは
苦い種子のようなかたちの体温で
わたしは、それだけで祈り
ああ、体温、それだけを用いて
わたしは音も無く、
祈り、


2007.2.5.


自由詩 種子の祈り Copyright A道化 2007-02-05 21:12:22
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