動脈
千波 一也


どんな夜にも月は鎮座して

 炎と水とがこぼれ合うから
 欠けても
 ゆるし
 て、

けものは静かに
帰属する



荒涼の異国を踏むようにして
夢見の鮮度に奪われて
濁りのそこには
清らかな、
らせん
健気に待つ身を
みせながら


 月は、まだか


重なる針に畏れをなしても
継がれてゆくものは
ひとつの冷酷

鼓動を拒むさなかでなら
失わずに済んだかも知れない

 手のなかで握るものに
 いつからか
 傷ついて
 紛れる、
 ふか
 く


ふり仰ぐたび
思い出せるような気配が
肩にそっと
圧力を


 まだ、
 生きて、まだ、


無言がほころぶ夜にだけ
のぼりゆける
音階がある

 ともに、
 ともに、触手をかばい合い
 ながれのために
 その脈拍
 は


射抜かれるほどの透明を
つなげて
消えて


しじまは、遙か





自由詩 動脈 Copyright 千波 一也 2007-02-05 11:32:08
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【月齢の環】