君の街まで桜色のバスに乗って〜冬から春へ〜
はじめ

 君の街へ白のバスに乗って病院へ行く
 君の街は僕の乗っているバスを最後に閉じられる
 僕は病状が悪化し 入院することに決まった
 喫茶店のバイトも辞めた 詩を書くこともやめたのだ
 氷でコーティングされた桜のトンネルを抜ける
 雪の降り積もる君の街は死んでいて 
僕と同じような境遇の人間が過ごしている
 もう永遠に春は来ない
 隔絶された君の街で僕は永遠の命を燃やすつもりだ
 
 入院しながら作業所で働く
 何の感情も持たない人達と一緒に 動く人形達と働くみたいに
 もう何年君の街に住んでいるだろうか
 僕は自分の歳を忘れてしまった
 繰り返される単調な毎日
 君の声と彼女の声が僕の精神を悩まし破壊している
 
 ある夜君は僕の前に現れた
 「あなたならきっと私の街を出ても上手くやっていける。生きて」
 僕は目を疑った けど笑顔になって言った
 「春になったら会える?」
 「会える。希望を捨てないで。あなたには大きな未来があるの。私の分まで一生懸命生きたら必ず私に会えるわ」
 「約束する?」
 僕は涙を拭いた
「約束するわ。あなたと出逢ったいつかのように。さようなら」
 「さようなら」
 君は静かに背景に溶けるように消えていった
 
 僕の心は晴れ渡り 桜の咲き誇る君の街を離れることになった
 始発場からエンジンを勢いよく吹かし膨らんだバスが出る
 桜のトンネルを抜けるとき 僕は後ろを降り向いた
 君の街から新しい世界へ 桜色のバスに乗って


自由詩 君の街まで桜色のバスに乗って〜冬から春へ〜 Copyright はじめ 2007-02-05 00:27:35
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
君の街まで桜色のバスに乗って